【4月の窓際は「罠」である】
カレンダーは4月。窓から差し込む陽光は、まるで
「もう冬は終わったよ」
と囁く天使のよう。
9年も狭心症と付き合っていれば、
春の寒暖差が天敵だってことは百も承知。
…のはずだった。
なのに、なぜだろう。その時の俺は、
ヒートテックを脱ぎ捨て、
薄手の春物ジャケットに袖を通していた。
「今日から俺は、春を生きる男になる」
と、根拠のない自信に溢れていたんだ。
【第一関門:玄関を開けたら、そこはシベリアだった】
意気揚々と玄関のドアを開けた瞬間。
「……え、待って?」
頬を撫でるはずの春風が、ナイフのような鋭さで突き刺さる。
「いや、でも戻るのはカッコ悪い」
「不健康のプロが一度決めたコーディネートを曲げられるか」
謎のプライドが俺の足をコンビニへと向かわせた。
これが、全ての終わりの始まりだった。
【第二関門:200メートルのデス・ロード】
コンビニまでの距離、わずか200メートル。
普段ならスキップ(は嘘だけど、普通に歩ける)で行ける距離が、
冷たい風のせいで血管が
「緊急シャッター、閉まりまーす!」
と一斉に閉店。
するとどうだ。
俺の心臓が
「聞いてねえよ!酸素足りねえよ!」
と、激しいサンバのリズムを刻み始めたんだ。
ドッドッ、カカッ、ドッドッ。
……おい、心臓。
今はリオのカーニバルじゃないんだ、近所の住宅街なんだ。
【第三関門:道端のタンポポを愛でるフリ(強制休憩)】
あまりの苦しさに立ち止まりたい。
でも、住宅街のど真ん中で胸を押さえてうずくまるわけにはいかない。
そこで俺が取った行動は、
**「道端のタンポポを熱心に観察するフリ」**だ。
「ほう、今年のタンポポは元気だな……」
なんて独り言を漏らしながら、
実際は心拍数が落ち着くのを必死に待つ。
通行人のマダムに
「お花がお好きなんですね」
と声をかけられ、必死の笑顔で「
ええ、命の息吹を感じまして」
と返した。
……俺の命の息吹が消えかけてるんだけどね!
【結末:やっぱり「E」は裏切らない】
命からがら帰宅。
心拍計でチェックすると、
期待を裏切らない「あちゃー」な数値。
やっぱり春の陽気は、不健康ライフを歩む俺たちにとって、
最も甘美で危険な罠(トラップ)だった。
でも、いいんだ。
冷え切った体に、コンビニで買った(心臓に負担をかけない程度の)
温かいコーヒーが染み渡る。
この「やらかし」こそが、俺の生きている証。
今日の教訓:
春の窓際は信じるな。
予備のストールは、命の綱だ。
皆さんも、春の陽気に騙されて
「コンビニ登山」
で遭難しないように気をつけて!


0 件のコメント:
コメントを投稿